はじめに
これまでWebサービスのディレクターやアプリ開発のPMをしているtabatyです。
最近「企画ってどうやればいいんですか」「たばてぃさんは企画ってどうやってるんですか」と問われたときに「プロダクトのゴールやKPIから複数案考え、最善と思える一手を選択し、ユーザーからフィードバックを得る」という答え方をしました。
一言でいうとこのように整理されるのですが、実際やっている事や型化した内容を伝えることができるとこれからアプリ開発やWebサービスを企画して成果を出したい人のためになると思い、筆を取りました。
※本稿はプロダクト改善系の企画方法論をまとめており、規定の概念を変えるような企画の方法論ではないことを前置きします。
企画の第一歩「目的を明確にする」
企画は基本的に目的(ゴール)有りきでスタートします。目的のない所に企画は生まれません。
例えば
- オーガニック経由の会員登録を増やし、CPAを下げたい
- LPからの問い合わせ件数を増やしたい
- 顧客のARPPUを増やし、LTVをアップさせたい
企画は何かしらの指標を上げたり、下げたりするために存在します。またその指標にはKPIツリー上のどの位置付けなのかを明確にする必要があります。明確にするというのは、目的とする指標を上げたり・下げたりすることで最終的な結果指標である売上にどのように寄与するのかを見える状態にしていなければなりません。また明確にしておくことで企画者の成果にもつながります。
企画に入るときの失敗例として、データを分析して、見つかったデータを元に企画を立てることが挙げられます。目的が明確になっていない状態でデータ分析をはじめて企画に繋げるというのは「瀕死の患者に対して健康診断をしてから悪いところを治しましょう」と言ってるようなもので、すぐにでも売上を上げたいスタートアップや新規事業にとっては時間を多く浪費してしまい、致命的です。企画におけるデータ分析の位置づけは、企画(仮設)の根拠や裏付けとして用いるに限ります。
ただ目的は企画を進めていく上で変わるのは往々にしてあります。企画を詰めていくと、その指標を改善するより効果が高く、コストの低いアイデアが生まれます。その場合は、目的を変えるほどのインパクトなのかを考慮して、目的変更の判断を行っていきましょう。
サービスのアイデアは「帰納法」でまとめる
企画の目的が決まったら、次は目的を達成するためのアイデアを考えなければなりません。そしてアイデアの見つけ方というのはコツをつかめば非常にカンタンです。
ロジカルシンキングの本には必ずといっていいほど「演繹法」「帰納法」についての説明が書かれていますが、その「帰納法」です。
【帰納法】多くの事実から類似点をまとめて結論を出す
帰納法は、多くの観察事項(事実)から類似点をまとめ上げることで、結論を引き出すという論法です。
起業したい人に有りがちなのが、自分の考えたアイデアは素晴らし過ぎて、話すとパクられてしまうから話したくないというあるあるがあります。
この世に「誰も考えたことのないアイデア」なんてものは存在しません。あなたが考えたアイデアは他の誰かも考えた事があるし、実態の存在しないアイデア自体に対する価値はゼロです。
逆に「誰かが考えた事があり、今もなお継続されているアイデア」は、世の中的に正しい可能性が高いことの裏付けにもなります。だからこそ多くの競合が実際に行っている事実から類似点をまとめ上げて、結論(アイデア)を引き出すのです。
そのために必ずやらなければならないのは『競合調査』です。
競合にはいくつかの種類があり、それぞれ参考にする観点が違います。
- 直接的な競合
- 業界内での競合
- ビジネスモデルが類似している間接的な競合
- 多くのユーザーを抱えるアプリ・サービスなどの広義の競合
動画サブスクリプションサービスNetflixを例に上げるとするなら。
直接的な競合は「Hulu/Amazonプライムビデオ」
直接的な競合に当たるのは、同じく動画サブスクリプションサービスを謳っているHuluやAmazonプライムビデオなどが競合であり、メインで研究しなければならない対象となるでしょう。直接的な競合の場合、理想はそのサービスを使い続けて、アイデアを常に発掘することです。
業界内での競合は「YouTube/Twitch」
同じく動画コンテンツを扱うプロダクトの仕様や動向も自社のプロダクトに対して還元できる点が多くあるでしょう。ビジネスモデルは違えど、扱っている商材は一緒であるので、商材の魅せ方・扱い方など参考になるでしょう。
ビジネスモデルが類似「Spotify/Tinder」
扱うコンテンツは違えど、サブスクリプションというビジネスモデル自体は一緒であるため、サービスとして課題になるポイント(指標)が一緒になる事が多いです。つまり同じ課題を抱えるサービスである以上、アイデアとしての宝庫である可能性が非常に高いです。
多くのユーザーを抱える広義の競合「Airbnb/Snapchat」
ユーザーを多く抱えるサービスは一見参考にできる点は少なく見えるかもしれません。しかし会員登録周りなど多くのサービスに共通して必要な箇所は精錬されている可能性が非常に高いです。また顧客体験などの観点で参考になります。
競合のサービスを利用して、自社のサービスへ活かせる点はないかを研究し、自社サービスに照らし合わせたときのアイデアを施策リストとして一覧にまとめます。
施策適用の判断基準「効果」と「コスト」そして「リスク」
効果の見積もりは企画者の経験に依るものが多いと個人的には思っています。しかし、施策リストの中から相対的に効果の高そうなもの、低そうなものに当てを付けるのは、誰にでもできます。
なので次にやることは、まとめたアイデアの中から企画者目線で効果が高いのか低いのかを「大中小」レベルで素早く見積もりを行います。
より精緻に見積もりたいときは「フェルミ推定」を行い、施策毎の効果を見積もります。
「効果」の見積もりが完了したら、次は「コスト」の見積もりです。
アプリやWebサービスのコストは基本的には「人件費」です。エンジニア工数・デザイナー工数のコストを見積もる必要があります。
こちらも慣れてくると企画者が概算で見積もることはできますが、慣れない方はエンジニア・デザイナーに施策の概要を説明して、工数を聞いてみるのが早いです。着手判断前の見積もりに時間をかける必要はなく、ざっくり見積もってどれくらいなのかを、3秒見積もりしてもらいましょう。
施策には「リスク」が伴う施策も存在します。
何かの指標は大きく上がるが、その代わりとして別の指標が下がる可能性がある、などのリスク面を洗い出す必要があります。想定されるリスクを洗い出した後は、そのリスクを如何に下げることができるのかも、同時に考えることで企画を前に進めることができます。
これらを見積もることで、施策リストの中でも優先順位を付けられます。施策判断者が居る場合は、その人の判断基準にもなるため、これらの見積もりは行いましょう。
結局、企画は自分が当たると思っているかどうか
企画を考えても良さそうな企画でなければ実現されません。実施可否を判断して前に進めるときも、別の問題がでてチームに暗雲が立ち込めることもあります。
その時、一番大切なのは『企画が当たると思っているか』これだけです。
前項でアイデアには価値がないと記しました。企画は最後まで推進して、結果を確認して、初めて価値になります。
価値がないものを自分がどれだけ信じれるのか、信じられるものにするためにどれだけ考え抜いたのかが、企画の醍醐味です。
だから、やっぱり企画って面白いよね。